心をほぐす
ベルガモットの香り
文・甲斐みのり
写真・かくたみほ
心をほぐすベルガモットの香り
イタリア南部が原産地といわれるベルガモット。見た目はレモンほどの大きさで、コロンとまあるい柑橘の一種。他の柑橘と違っているのは、
果実を食べたり、絞ってジュースにするのではなく、果皮から精油を採取して、香水やアロマテラピーに用いるところだ。私が初めてその名を聞いたのは、フレーバーティーのひとつである、アールグレイの香料として。アール
グレイは、イギリスの外交官・グレイ伯爵が、中国滞在中にお茶に香りをつける技術を知り、母国に持ち帰ったのが始まりとされている。
日本でベルガモットは、高知県の一部以外ほとんど作られていない。つまり名前を聞いたことはあっても、実際に目にしたことがある人は、日本にはまだそう多くいないということ。そんな中、観光事業で携わる和歌山県田辺市の柑橘農園がベルガモットを栽培しており、私が案内役を務める田辺市の観光イベントで紹介することになった。ベルガモットは輪切りにした途端、甘くみずみずしい華やかな香りが辺りに広がり、なんともいえない幸福感に包まれる。来場者に「ベルガモットはご存じですか?」と声をかけると、なんとなく認識してはいたけれど、実物を見るのは初めてという人がほとんど。癒やされる、リラックスできると、感嘆の声があがった。田辺市の喫茶店では、「ティーソーダ」というアイスティーの炭酸割りが昔から親しまれている。そこでイベントでは、ベルガモットの輪切りを浮かべたティーソーダを提供した。もっと気軽にベルガモットが手に入れば家でも味わえるが、今の日本で柑橘としてのベルガモットを入手するのは容易でない。このイベントでベルガモットの香りに魅了され、アロマオイルを入手したという人がいたが、私自身もベルガモットという香りそのもののファンになった。
ベルガモットの香りは、気持ちをほぐしたりストレスを和らげる効果があるといい、就寝前に爽やかな香りに触れると、心地よくぐっすりと眠りにつける。最近、眠りが浅いという友人にも、私がお気に入りのベルガ
モットの香りを届けようと思っている。
文・甲 斐 み の り
写 真・かくたみほ
2023年11月号(C)宝島社